除夜の鐘は何故108回?
目次
■除夜の鐘のルーツ
仏教において除夜の鐘が108回なのは、
一般的に煩悩の数といわれており、
煩悩を払う為に108回鐘を突くとされています。
除夜の鐘は中国の宋時代の慣習にルーツがあり、
百八の鐘というまさに除夜の鐘として日本に普及、定着しました。
ちなみに除夜は大晦日の夜を指し、
1年の終わりに鐘を突くことで、旧年と新年を分けることとなります。
お寺では大晦日のうちに107回までつき終わり、
新年を迎えてから残りの1回を突くところが多いです。
除夜の鐘の目的はその年の煩悩を大晦日に解消して、
新しい1年を迎えることにあります。
■煩悩の数
煩悩は仏教では人々を苦しめるものとされており、
例えば欲しい物を手に入れても満たされない欲が挙げられます。
欲が満たされても苦しみから解放されないことを、
仏教では有無同然といいます。
これがそもそも根本的な間違いで、
いくら金や名誉を手にしても満足できず、
もっと欲しくなる原因だといえます。
煩悩は、更にいえば自らを苦しめる心の働きと定義されていて、
つまりは誤った思考や行動に繋がるものとなります。
いずれにしても、とらわれ続けることが苦しみ続けることになるので、
お寺では毎年大晦日に除夜の鐘を突いて鳴らすわけです。
108は誰にでもある煩悩の数といわれていて、
これを鐘の音で払うことによって、
幸せな1年を迎えられるようにとの願いが込められます。
煩悩という言葉は一般的に使われていますが、
世間一般には物欲や性欲を指します。
しかし108もあるわけですから、
当然のことながらこれらに留まるはずがないです。
■仏教の教えでは
仏教では貪欲と瞋恚、愚痴の3つが三毒とされ
人間の諸悪の根源と考えられています。
貪欲はとんよくと読み、
簡単にいえば満たされずに終わりがない欲を意味します。
瞋恚は、欲が満たされないことで増幅される怒りのことで、
時に信頼関係や人間関係を破壊する原因となります。
愚痴は文字通り、妬みや嫉みから出てくる感情で、
これを口に出すと誰かを傷つけたり自分も傷つけることになり得ます。
三毒から愚痴を除き、?沈や掉挙、疑を加えたものを五蓋といいます。
?沈は心の沈鬱のことで、
心が巧みでなくふさぎ込むことと表されることが多いです。
掉挙は、心の昂ぶりによって頭に血が上がったことです。
つまり、掉挙は?沈の逆でこれらはどちらも煩悩ということになります。
疑は勘の良い人なら分かりますが、文字通り疑念だったり躊躇の意味です。
お寺の教えでは、疑は健康的な生き方の妨げになる煩悩とされます。
煩悩には他にも、五下分結と三結や五上分結といった分類があります。
大切なのはそれだけ人の心には良くないものがあって、
取り憑かれているとこの世の苦痛から解放されることはないことになります。
悟りを開くとは、簡潔には煩悩から解放される状態を意味しますから、
良くない心にとらわれない悟りの境地を目指すことが仏教の道だといえるでしょう。
108もある煩悩には、人間の感情のあり方と心の綺麗や汚い、
過去現在と未来などが含まれています。
これらの要素を掛け合わせると合計108という数になるわけです。
人間のあらゆる苦しみに由来する四苦八苦も、
実は煩悩に関係しているといわれています。
4×9と8×9を掛けて合計すると分かりますが、
煩悩と同じ108という数字になります。
勿論、これは偶然かもしれませんし考え方の1つに過ぎないです。
とはいえ、お寺では煩悩が108あると信じられていますし、
それがあるからこそ人々は苦しんでいると考えています。
だからこそせめて除夜の鐘を突くことによって、
鐘の音を聞いた人の心が安らかになるように毎年お寺で行われているわけです。
■近年の除夜の鐘
近年は、夜中から早朝に掛けて鐘の音が煩いというクレームもあるようですが、
耳を澄ませて聞いてみると心に染み渡る音だと分かります。
鐘の音を聞いたからといって、
人の行動が大きく変わるとは限りませんが、
少なくとも1年を終えて新年を迎えるのには相応しいと思われます。
除夜の鐘は、鐘を突く人にとっても1つ1つ煩悩を払い、
新年に備える心のあり方を見つめる機会になります。
その意味もあるから毎年鐘がつかれているわけで、
時間を掛けて1回1回丁寧に綺麗な鐘の音が鳴り響くように突かれています。
除夜の鐘の音には、煩悩を取り除いて清らかに新年が迎えられる意味があります。
とてもありがたい音で耳を澄ませるだけの価値がありますから、
1年の終わりの1時間くらいは鐘の音に耳を傾けて静かに過ごしたいものです。
■まとめ
仏教の年中行事が一方的に押しつけられていると考える人もいるでしょうが、
お寺の存在は人々や地域に溶け込んでいますし、
日本人の宗教観と深く結びついています。
宗教を問わず、日本人の毎年の行事と言っても過言ではないので、
目くじらを立てないようにするのが賢明です。
意にそぐわないといって批判すれば、
それも煩悩の1つに数えられてしまいますから、
大晦日の夜は何も考えずにただじっと鐘の音に耳を澄ませることをおすすめします。
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